2015 AUTOBACS SUPER GT Rd.1岡山大会 31号車レポート

2015 AUTOBACS SUPER GT ROUND1
開催地:岡山国際サーキット岡山県)/3.703km
4月4日(予選)天候:曇り
コースコンディション:ドライ 観客数:9,300人
4月5日(決勝)天候:曇りのち雨
コースコンディション:ウェット 観客数:17,000人

予選5番手から3周でトップに。そのまま逃げ切り開幕戦を制す!

2015年のスーパーGTが、岡山国際サーキットで幕を開けた。トヨタプリウスGTを走らせるaprにとって、今年は大変革のシーズンとなる。3年連続で第3ドライバーとして起用されてきた、中山雄一選手がレギュラーに。また、嵯峨宏紀選手がWEC(世界耐久選手権)へのフル参戦が決定したため、日程の重なるレースでは05年以来の復帰となる、佐々木孝太選手がドライブすることとなった。マシンも空力面が大幅に見直されるとともに、タイヤもブリヂストンにスイッチ。すべてポジティブな方向に向かっているのは、オフのテストでも証明されている。

2本のストレートを13のコーナーでつなぐテクニカルコースの岡山国際サーキットと、プリウスGTの相性は良く、昨年もポールポジションを獲得。開幕ダッシュを決め、悲願のチャンピオン獲得に向けて弾みをつけることが期待された。

公式練習 4月4日(土)9:00〜10:45
シーズンオフに行われたテストでも好調だった「TOYOTA PRIUS apr GT」ながら、その一方でライバルが性能調整を嫌って、あるいは手の内を明かすことを避けて、本領を発揮せずじまいということもしばし。しかしながら、レースウィークに入れば、本領を発揮せざるを得ないため、それぞれの真価が披露されることとなる。土曜日の午前9時から行われた公式練習は、嵯峨選手からスタート。序盤はピットイン〜アウトを繰り返し、入念にセットアップが進められる。

中盤には2回の赤旗中断はあったが、2回目の後には予選想定の走行で、嵯峨選手は1分27秒739をマークして、その段階でのトップに。直後に1台が、そしてGT300単独のセッションでもう1台に逆転を許したため、3番手に甘んじてしまうが、予選に向けては確かな手応えをつかむこととなった。

GT300単独セッションの開始1分前には、中山選手がコースイン。決勝想定の状態ながら、1分29秒台をコンスタントに刻んで、自身のベストタイムは29秒072。この後行われた、サーキットサファリで再び嵯峨選手が乗り込んでロングランも行い、終了間際には中山選手が状況を確認。予選を前に、順調な滑り出しを見せることとなった。

公式予選 Q1 4月4日(土)14:50〜15:10
今回のQ1担当は中山選手。実はスーパーGTで予選を走るのは初めてとあって、走行前はプレッシャーもあったというが、走り出してしまえば、そんなムードを一切感じさせないのは他のカテゴリーで実証済。36秒台からのスタートで、タイヤに熱が入るごとタイムを刻んでいく。

そして4周目には27秒063をマーク。それも最終コーナーでスロー走行していた車両に引っかかりながらのタイムである。コンマ01秒差で2番手となるも、惜しくも……という表現が、これ以上相応しいのはそうそうない状況で、嵯峨選手にバトンを託すこととなった。

公式予選 Q2 11月15日(土)15:35〜15:42
Q2担当の嵯峨選手は、計測開始から3分を経過したところでコースイン。しっかりクリアラップを取るための配慮である。もちろん狙いどおりの展開となったこともあり、ウォームアップを34秒台で1周のみで済ますと、いきなり27秒126、27秒006と好タイムを連発し、Q1の中山選手のタイムを上回る。

しかし、その時点ですでに26秒台に入れたライバルもある一方で、最終計測周は逆に27秒689とタイムダウン。原因はQ1からの路面変化にマシン環境を完全に合わせ込めなかったため。それでも5番手からのスタートであれば、十分優勝を狙い得る。「TOYOTA PRIUS apr GT」の決勝での激しい追い上げに期待がかかることとなった。

嵯峨宏紀選手
「Q1からQ2にかけて、『思いのほかタイムが上がらなかったな』というのが正直なところです。リヤタイヤの方が先にグリップが来た感じで、最後までバランスはBESTではなかったです。ブリヂストンのタイヤを使った、初めての予選だったということもあるのかもしれません。ただ決勝に向けては、そんなに悪い要素は持ってはおらず、予報が伝える雨の中でもポテンシャルは高いでしょうし、ドライもロングは悪くないと感じています。決して5番手は悪い位置ではないですし、そこから追い上げられると思います。」

中山雄一選手
「初めてのGTでの予選ということもあって不安もあったのですが、ニュータイヤを履いたらグリップが上がって、最終ラップで引っかかっていたにもかかわらず2番手タイム。ほとんどトップと変わらないタイムを出せたので、自分の予選は良かったと思います。でも、Q2でマシンのバランスが合わなくなってしまったのは、自分のフィードバックという部分に問題がありました。路面が変わるのを予測してコメントできなかったのが、Q2の嵯峨選手のタイムが伸びなかった原因だと反省しています。決勝は雨になりそうですが、どれほどの勢いであるかが、すべてを決めそうですね。」

金曽裕人監督
「昨年同様にポールを狙っていましたが上位のマシンをみて、あれれ?という感じです。気がつけばオフシーズンのTESTで、このタイムが出ていないマシンが予選上位。うまく爪を隠されていたのだと….。反面、我々は全開で挑戦していたが実はパフォーマンスが足りていないことも露呈。予選5番手は悪くはないが、まだまだマシン開発を促進しなければシリーズは狙えないと痛感致しました。明日は劣勢な状況があるかも知れませんが今持つパフォーマンスを目いっぱい使い戦いたいと思う。」


決勝日・フリー走行 4月5日(日)9:00〜9:35
決勝の行われる日曜日は、あいにくの雨模様に。フリー走行の開始時は特に雨が強く、「TOYOTA PRIUS apr GT」を駆る嵯峨選手ですらスピンを喫したほど。幸い、ダメージなくコースに戻ったものの、直後にモスSでクラッシュした車両があり、15分ほどセッションが中断される。そのため、当初の予定より終了時間が5分延長されることになった。再開後も嵯峨選手がステアリングを握り、濡れた路面にセットを合わせるべく、積極的な走行を重ねていく。41秒908を記したところでピットイン。ラスト5分は中山選手が2周走り、42秒582を記してチェッカーが。このままウェットコンディションであろう、決勝に向けて無事に最終確認を済ますこととなった。



決勝レース(82周)14:30〜
13時20分より、決勝のスタート進行が始まり、まずは8分間のウォームアップ走行が実施される。開幕戦のスタート担当である嵯峨選手は、ここで1周のみ走ってコンディションを確認する。この段階で雨は本格的に降ってはおらず、止んでいるか小雨という状況。しかし、路面は依然として濡れたままで、いずれにせよ岡山国際サーキットでの開幕戦は、3年連続でウェットコンディションからの始まりとなった。



問題はタイヤ。ドライタイヤを選ぶか、ウェットタイヤを選ぶか悩ましいところで、勝負をかけてドライタイヤを選んだチームもあった中、「TOYOTA PRIUS apr GT」はウェットタイヤを装着する。このところスーパーGTでは恒例となっている、白バイとパトカーの先導によるパレードラップが岡山県警によって行われた後、フォーメイションラップが通常どおり1周。そして、グリーンシグナルの点灯とともに、熱戦の火ぶたが切られていく。


オープニングラップのうちに、ふたつポジションを上げた嵯峨選手は、その勢いで2周目の1コーナーで「ARTA CR-Z GT」をかわして2番手に。さらに3周目のモスSで「GAINER TANAX GT-R」をかわしてトップに躍り出る。


そのまま嵯峨選手は後続を引き離し続ける中、路面の乾きは予想以上に鈍く、ドライタイヤを装着していた車両は大きく遅れていく。20周を超えたあたりで、ようやくウェットタイヤ勢との優劣が逆転するが、時すでに遅し。逆に30周目ぐらいから再び雨が降り出したから、天を恨んだに違いない。その状況においても、「TOYOTA PRIUS apr GT」のペースは大きく落ちることなく、早めにピットに入る車両を尻目に、なおも嵯峨選手は周回を重ねていく。


そして、44周目に「TOYOTA PRIUS apr GT」は、ようやくピットイン。まだ走り続けていたのは1台のみとあって、いかにタイヤがコンディションにマッチしていたかが分かる。40秒強の素早いピットワークの後、いよいよ中山選手がコースイン。

もちろんトップでレースを折り返す。走り始めはタイヤのライフを意識して、ペースを抑えていたものの、雨の勢いが増したことで最後まで保つと、チームは中山選手にペースアップの指示を出し、それに応えて、さらに後続を引き離すこととなり、最後は2位の「ARTA CR-Z GT」にすら42秒もの大差をつけて、チェッカーを受けることとなった。

開幕戦をまったくのノートラブルで、完璧な展開で制した「TOYOTA PRIUS apr GT」。次回の富士スピードウェイでのレースには、嵯峨選手がWEC Rd.2出場のため、欠場となるものの、代わって佐々木選手がドライブする。40kgのウエイトハンデは背負うものの、佐々木選手と中山選手のタッグが、どれだけの威力を発揮するのか、そちらも注目したいところだ。

嵯峨宏紀選手
「決勝では、非常にタイヤのパフォーマンスが良くて、スタートから勢い良く前に行けて、トップに立って逃げるという展開だったので、自分としては完璧な仕事ができたんじゃないかと思います。天気の読みも完璧で、僕は硬いタイヤで行ったんですが、引っ張って乾いてきた頃に使い切って、雨が降ってくるであろうタイミングに、中山選手にちょっと柔らかいタイヤをチョイスすることができました。
今年からパートナーやタイヤが変わりましたが、中山選手は信頼できるパートナーだと思っていますし、まったく心配していませんでした。ただ、タイヤに関しては、今回履いたレインタイヤが、正直ぶっつけ本番だったので、そこの不安はあったんですが、想像以上にパフォーマンスが良かったので、最初から見てのとおりの結果を出すことができたので、非常に良かったと思います。次のレースはスパから応援しています。実は自分がWECに行くので、代わりに佐々木選手がチームを引っ張っていってくれるんですが、乗れば間違いなく速いのは皆さんご存知のとおり。40kgの置き土産はありますけど、得意な富士なので、このまま表彰台に上がれるようなレースを続けていって、シーズンチャンピオンを中山選手が獲れるように支えていきたいと思っています。」

中山雄一選手
「嵯峨選手が20秒のリードを作ってくれたので、後ろとのギャップを無線で聞きながら、最初のうちはセーブしてタイヤを労わりながら走りました。途中から監督から『恵みの雨が来たよ』と言われたので少しずつペースを上げて、それにタイヤも応えてくれて、最後までグリップは残っていたので、いいペースを維持して走ることができました。嵯峨選手や佐々木選手からも勇気づけられるようなコメントをもらって、レース後半は逃げることができて、勝つことができたので本当に嬉しいです。
サードドライバーを3年やって今年初めてレギュラードライバーとなり、自信はずっと前からあったのですが、『やっと発揮できるんだ』という嬉しい気持ちでした。決勝ではペースが良かったので、ここまでやってきたことを信じて走ることができました。次回は40kgのウエイトを積まれることで、クルマのバランスもどうなるか、まったく分からないですけど、テストで嵯峨選手、佐々木選手と一緒にクルマを仕上げて、調子はどんどん良くなっているので、引き続き力を発揮できると思っています。」

金曽裕人監督
PRIUSにマシンチェンジをしてからの岡山大会は過去3年間まともにレースは出来ておらず3年連続リタイア。今回初めての完走が優勝であり感無量です。特に完璧な仕事をこなした嵯峨選手と中山選手に感謝。次に、魔法がかかったような驚きのパフォーマンスを発揮したブリヂストンタイヤに感謝です。そして最後に、このプロジェクトを支えて下さっている関係者の皆様、ファンの皆様に感謝いたします。
PRIUSは過去の3年間で、まだ2勝しかしておらず、まだシリーズを狙うにはパフォーマンス不足と心得ています。もっと速く強靭なマシンに仕上げ、連続表彰台を目指し第2戦の富士に挑みますので変わらぬ応援のほどよろしくお願いいたします。」