SUPER GT Rd.1岡山レポート





内外のトップドライバーが集結し、バラエティに富む車両によって激しいバトルが繰り広げられることで高い人気を誇る、AUTOBACS SUPER GTシリーズ。その開幕戦が、岡山国際サーキットで開催された。


チーム結成から3シーズン目となるLMcorsaは、昨年からGT300において2カー体制を敷くようになったが、今年はそのうちの一台をBMW Z4 GT3からフェラーリ488 GT3にスイッチ。そしてドライバーラインアップも改め、都筑昌裕が新たに加わって、新田守男とコンビを組むこととなった。また、昨年の新田のパートナーである、脇阪薫一もレースには常に帯同してアドバイザーを務めるだけでなく、長丁場の富士500kmと鈴鹿1000kmには第3ドライバーとして加わる予定となっている。


都筑は2008年のポルシェカレラカップジャパンのチャンピオンで、SUPER GTには翌09年から出場。入賞経験も豊富で、11年には表彰台にも上がっており、ジェントルマンドライバーではあるものの、その高い実力は誰もが認めるところ。一方、フェラーリ488 GT3は全くのニューマシンであるため、そのポテンシャルは未知数ながら、ここまで繰り返したテストをほぼノートラブルで経過しており、ドライバーからも好印象が伝えられている。スタッフ全員が十分な手応えを抱いて、サーキットに臨むこととなった。



SUPER GTの本格的なレーススケジュールは、土曜日からスタートする。まずは公式練習から。最初に「JMS LMcorsa 488 GT3」に乗り込んだのはベテランの新田だ。開始とほぼ同時にコースインし、順調に周回を重ねていく。何度もピットインを行い、その度セットアップを進めて24周を走行。その間のベストタイムは、1分26秒869。そしてほぼ1時間を経過したところで、都筑に交代する。

テストではしっかり走り込めているとはいえ、本番となると1年のブランクがあることから、都筑はあくまで慎重な走りを心掛け、マシンの特性と自身の感覚の同調を行っていく。そして、終了間際の14周目には1分28秒550をマーク。新田の記したベストタイムは8番手に相当したが、その結果以上にチームにはいい雰囲気が漂っていた。



■予選結果 9th(1'26"707)


予選はノックアウト方式で行われ、GT500とGT300が分かれて15分間のQ1を走行。なおGT300では台数の増加にともない1台増やされた上位14台が、続く12分間のQ2に進出を許される。Q1に挑んだのは新田で、計測開始から3分を経過したところで「JMS LMcorsa 488 GT3」とともにピットを離れていく。1周をウォームアップに充てて、いよいよアタックを開始。いきなり1分26秒615を叩き出して、その時点でのトップに躍り出る。さらなるタイムアップを狙って、もう1周コースを攻め立てるも27秒117に留まり、チェッカーを待たずにピットに戻ることとなった。


終了間際に一台の逆転を許してしまったことから、2番手とはなったものの、難なくQ2進出に成功。スターティンググリッドの決定を、都筑に託すこととなった。意気に応えた都筑も、1周のウォームアップの後、アタックを開始。まずは1分27秒024をマークすると、次の周には26秒707にまで短縮を果たす。これにはピット内で大歓声が!ポジションこそ9番手ながら、自己ベストを大幅に更新できたことに、都筑も安堵の表情を見せていた。



■決勝結果 5th(76 laps)


晴れの国おかやまと呼ばれるだけあって、レースウィークは終始おだやかな天候に恵まれ、すっかり春の雰囲気を漂わせていた。決勝当日も例外ではなく、もはや上着など必要なかったほどだ。


早朝にはフリー走行が行われ、まず都筑が「JMS LMcorsa 488 GT3」をドライブ。1分31秒817を記録して間もなく赤旗が出されたため、やむなくピットイン。その間に新田と乗り換える。連続周回をこなしつつ28秒394を記したところで、二回目の赤旗が。再開後は再び都筑がドライブし、30秒710をマークしたところでチェッカーが振られることとなった。


その後、サポートレースやピットウォークなどのセレモニーが行われ、午後1時30分から決勝レースのスタート進行が始まる。同時に8分間のウォームアップも開始。スターティングドライバーの都筑が最終チェックを行い、いったんピットに戻った後、グリッドにマシンは止められることとなった。この日、サーキットを訪れた観客は、実に19000人!どれだけSUPER GTが高い人気か、示す最高の証拠だと言えよう。そんな観客の興奮が最高潮に高まる中、レースはグリーンシグナルの点灯と同時に熱戦の火ぶたを切った。



オープニンググラップのうちに12番手に後退した都筑ながら、6番手を争う集団にまずはしっかり続いていく。そして、7周目にひとつポジションをアップ。21周目には後続車両一台の先行を許すが、なおも集団から離れない。コーナーリングスピードでは前後のマシンに勝ったものの、コース幅が決して広いとは言えない特性から抜き去るまでには至らず、むしろ行く手を阻まれた状態となっていたのだ。そこで早くも25周目にピットイン。タイヤを換えずに新田をコースに送り出す。


視界の開けた状態でなら、本来のスピードでの周回が可能。ライバルがドライバー交代を行うたび、新田は順位を上げていき、全車完了となった時、「JMS LMcorsa 488 GT3」は6番手に立っていた。さらに58周目のWヘアピンで1台をパス。その後はまったく危なげない走りを見せて、新体制での緒戦を5位という結果で終えることとなった。


未知の要素も多く、不安がまったくなかったわけではなかった開幕戦だけに、いきなり入賞という結果にチームは沸き立った。しかし、これに満足することなく狙うは、さらに上位、そして優勝だ。次回のレースは、ゴールデンウィーク富士スピードウェイが舞台。都筑、新田、脇阪の強力トリオで挑む予定となっている。



■チーム監督 小林 敬一


クルマのポテンシャルの高さが、今回のレースで証明されたと思います。やっぱりフェラーリというのは素晴らしい、良くできたクルマでしたね。それに乗っている新田選手は、もはや言うまでもありませんが、都筑選手が復帰初戦なのに順応性がいいんでしょうね。すぐクルマに馴染んで、しっかり対応できて走ってくれたから、こういう結果が生まれたのかな、と思います。まずは上々のスタートを切ることができました。ストラテジー的には何のミスもしていませんし、タイヤのマネージメントもちゃんとできていましたから、トップ連中と同じような戦術も練れました。なおかつ、しっかり走り切れたので、ものすごい手応えと収穫もありました。


■ドライバ― 都築 晶裕


いいレースができたと思います。タイヤ無交換という作戦をとっていたので、最初からプッシュせず、ずっと保たせることしか考えていなかったのですが、自分なりにペースを抑えても前についていけたので、最終的にいいところに行けるという確信もありました。本当に初めてのクルマ、初めてのチームで入賞できたのは、すごく嬉しいです。皆さんのおかげです。感謝しています。まだまだ始まったばかりですが、チャンピオン獲れるように頑張っていきます。


■ドライバー 新田 守男


クルマが新しくなっただけじゃなく、スタッフも全員が去年と一緒ではなくて、ドライバーも代わって、開幕戦ではミスやトラブルがつきものですけど、クルマを良く仕上げてくれたし、チームもミスなくやってくれました。当初からタイヤ無交換で行こうとスタートから決めていて、都筑選手がタイヤをセーブしてくれながらも、前が見えるところで僕にバトンタッチしてくれたので、5位という結果が得られたんだと思います。次の富士はどうでしょう、そんなに簡単じゃないでしょうが、今回よりも上のポジションを狙っていきたいと思います。


■エンジニア 成澤 健二


開幕戦で入賞できて、すごく良かったです。ひとつだけ悔やまれるのは都筑選手のスティントで、ちょっと遅いクルマに引っかかっちゃったので、それがなければ、もうちょっと行けていたかなぁ、ということ。それ以上に、トラブルも一切起こらず、いいクルマなんだなとも改めて思いました。次の富士はストレートスピードにちょっと不安が……。でも、クルマのセッティングとか方向性はだいたいつかめた感じなので、次はレース距離も長いし、レースラップもすごく安定しているので、またいい結果が出せるかな、と思っています。