SUPER GT 第5戦富士レポート


AUTOBACS SUPER GTシリーズ第5戦「SUGO GT 300km RACE」が、8月最初の週末に富士スピードウェイで開催された。前回のレースは実に2カ月以上のインターバルを置いたが、今回はわずか2週間後という慌ただしさで、しかも次回のレースも3週間後。それゆえ、「真夏の3連戦」とも呼ばれ、シリーズを占う上での最大の山場となっている。

都筑晶裕と新田守男を擁し、フェラーリ488 GT3でGT300に挑むLMcorsaは、ここまでの3戦すべてで入賞を果たしてきた。今年のGT300の特徴として挙げられるのは、上位陣のポイントが分散していることで、現状トップですら33ポイントでしかない。ということは、もし表彰台に上がれば、ランキングは一気に上位に進んでいく。その手応えは十分にある。5月に行われた、ここ富士での第2戦では6位でゴールしており、また長いインターバルの間に行われたテストでも、順調にメニューをこなしてきたからだ。

最初の走行となる、土曜日午前の公式練習では開始早々にストップ車両があって、赤旗が出されてしまう。その時、すでに「JMS LMcorsa 488 GT3」は新田によって走行中で、すぐにピットに戻ることに。しかし、不具合などは一切なかったことから、早々と都筑にシートが委ねられることになった。9周連続で走行した都筑は早々と1分39秒台に乗せた後、ピットに戻ってフィーリングをスタッフに伝える。

それをもとにセットの変更が行われ、都筑はいよいよ予選モードへと突入。2周をウォームアップに充てた後、マークされた1分38秒829は、その時点での3番手に走行。しかも、次の周には38秒780へと、さらなる短縮を果たすことに成功。本来ならば、もう1アタック行きたいところだったが、そこにあいにくの赤旗が。とはいえ、都筑はスピードに対して、確かな手応えを得ることとなった。

再開からしばらくすると、再び「JMS LMcorsa 488 GT3」に新田が乗り込み、決勝セットが詰められることに。何度もピットに戻って調整され、それは最後のGT300単独のセッションでも、そして終了後のサーキットサファリでも行われたほど。終盤になって、一台が都筑のマークしたセッションベストを更新したため、4番手とはなったものの、今まで以上の好感触を得た上で、予選に挑むこととなった。



■予選結果 3th(1'37"908)

公式練習が行われた午前も暑いには暑かったものの、陽は低い位置にあったから、まだマシだった……と言わざるを得ず、陽が頂点にまで達した予選の頃は、まさに猛暑となっており、路面温度は50度を超えて、もはや焦げるに等しい状態となっていた。


今回のQ1は、初めて都筑が担当した。コンディションの安定を待って、スタートから5分後にコースイン。アウトラップと1周をタイヤのウォームアップに充て、さらにポジショニングを整えたところでアタックを開始する。最初のアタックで都筑は1分38秒511をマーク。そのままアタックを続け、セクター1では自己ベストも更新する。ところが、その直後に無情にも赤旗が……。コースサイドで停止した車両を回収するためだ。6分ほどの中断で計測は再開されるも、Q1突破は確実でであることから、「JMS LMcorsa 488 GT3」はそのままピットでステイ。再開後に一台だけ大幅なタイムアップを果たした車両があったため、ひとつ順位を落としたものの、都筑は10番手で無事、新田にバトンを託すこととなった。


Q2担当の新田は、都筑からのインフォメーションを受け、タイヤの内圧をより良い状態とするため、ウォームアップをもう1周増やすことに。これが大正解。1分37秒908をマークして3番手に浮上、次の周にもアタックしたが、ここでのタイムアップは果たせず。しかし、先のタイムを上回るものはもはや現れず、「JMS LMcorsa 488 GT3」は今季最上位となる、3番グリッドから決勝レースに挑むこととなった。



■決勝結果 11th(61laps)

日曜早朝のフリー走行は、今回もまた都筑からの走行に。コースオープンと同時に、「JMS LMcorsa 488 GT3」はピットを離れていく。今回は絶えずコンディションに恵まれたはいいが、いささか温度が高過ぎ。それだけに過酷な戦いになるのは間違いなく、ドライバーにもスタッフにも精度の高さが要求された。


1分40秒537をベストに、決勝を想定したタイムでコンスタントに走り続けた都筑は、7周走行。その後は新田が走行し、やはり40秒台でコンスタントに走行しつつ、チェックを行っていく。ここ一番でのスピードも確認すべく、新田は39秒900を記すことに。これにて最終チェックは完了。


今回もスタートを担当したのは都筑だった。開幕戦、そして前回に続く3回目とあって、グリーンシグナル転倒からのダッシュは、まさに圧巻の一言。ぐんぐん加速していって、1コーナーまでに先行する二台を脅かすほどだったからだ。間も無く都筑が気づくのは、フロントのグリップ感の不足。そのため、タイヤのマネージメントに集中するよう作戦を切り替えたことから、三台の先行を許したものの、セカンドグループにはしっかり食らいついていく。そんな中、1コーナーでの接触、またコース上の落下物の回収のため17周目からセーフティカーがコースイン。そのセーフティーカーの走行は5周、20分近くに渡ることとなる。


そして、23周目からバトルは再開。すでに規定周回は満たされていたことから、ピットロードオープンと同時にドライバー交代を行うチームも少なくなかったが、「JMS LMcorsa 488 GT3」はそのまま走行を続けることに。そして、30週目に新田選手と交代。


しかし、ピットではトラブルが発生していた。ドアが外れるなど、さまざまな不運が重なり、大きなロスタイムを抱えてしまったのだ。この時点で新田は17番手にまで後退。だが、その後は、まさにオーバーテイクショーが繰り広げられた。一台、また一台と先行車両を捉え続け、51周目には12番手に浮上する。56周目には6番手を走行していた車両がスローダウンののち、ピットに戻ったこともあって、入賞まであと一歩と迫ったのだが、あと一台が遠かった。「JMS LMcorsa 488 GT3」は初めて入賞を逃し、11位に甘んじた。次回のレースは鈴鹿を舞台に、3週間後に行われる。伝統の一戦。1000kmレースではよりきびしき戦いが予想されるが、第3ドライバーに脇阪薫一を加えて大逆襲を誓う。


■チーム監督 小林 敬一

ピットでこんなことあるのか…ってことが起こってしまいました。タイヤ交換の際にドアをぶつけてしまって、ヒンジが外れてしまったのか、ドアが閉まらなくなってしまい、大きく順位を落としてしまった一方で、後半を担当した新田選手のタイムはまわりより遥かに速かったし、前半の都筑選手も富士は走り込んでいる得意なコースだったようで、いいペースで走ってくれたから余計に残念です。次の鈴鹿はハンデもほとんどないし、クルマのバランスはずっと良いままなので、表彰台は間違いなく取れる!都筑選手、新田選手、脇阪選手、三人の激走にぜひ注目してください。


■ドライバー 都築 晶裕

年最初の富士のレースでは練習から決勝まで、まずまずのタイムを刻めていたので、今までは新田さんにQ1を任せていたのですが、今回は自分が行くとレースウィークに入る前から、ある程度覚悟を決めていました。Q1突破はもちろん嬉しかったですが、アタック中に赤旗があったので、もっと上の順位でのQ1突破という形で終わりたかったです。決勝では、序盤から心配していたフロントタイヤのグリップ感のないのに気づき、タイヤマネージメントの走りに落とし込むことで三台に先行されてしまいましたが、ラップタイム的にそれほど落ち込むことなく、SC解除後は後続車両を抑えて6番手で新田さんにバトンを渡せたことは、自分的には満足しています。次の鈴鹿では表彰台を狙っていきたいです。友人も多く来てくれるので、いいところを見せたいですし、チームとして感動できるレース展開ができれば、と思っています。


■ドライバー 新田 守男

ピットでいろいろあって順位を落とし、それまで都筑選手が抑えてくれた車両が上位でゴールできているところをみると、僕らもそういう順位でたぶんゴールできていたと思うので、すごく残念です。今回、目指していたのは最低でも4位、表彰台もターゲットに入れていたので、落としてしまったのは非常に痛いです。なんていうのかな、今の僕らに足りない部分、もっと磨かなきゃいけないところが出てしまったというか……。次回の鈴鹿は、ライバルに比べると、確かにハンデはそんなに厳しくないけど、だからといって楽観視していると、またね。改めて気を引き締めて挑むつもりです。


■エンジニア 成澤 健二

ピットミスがいろいろ重なってしまいました。まずドアが外れて、それで30秒ぐらいロスして。ドライバーが少しオーバーしたのもあるし、タイヤを用意する位置も悪かったとか、不運も本当に重なってしまいました。でも、それがなければペースは特に後半、良かったので余計に残念なんですが……。次の鈴鹿でリベンジを果たします。今回のレースでいろいろ分かったこともあり、柔らかいタイヤも履けるようになったので、次は行けると思います!