SUPER GT Rd.7タイレポート

AUTOBACS SUPER GTシリーズ第7戦「BURIRAM SUPER GT RACE」が、10月8〜9日にタイ、チャーン・インターナショナルサーキットで開催された。近年、SUPER GTシリーズは年に一度日本を離れてレースを行うが、タイでの開催は今年が3回目。熱帯の国タイにおいて今は雨季とされ、シーズンを通せばやや過ごしやすい時期というが、すっかり秋めいてきた日本と比べれば十分に暑く過酷な戦いに挑むこととなった。


都筑晶裕と新田守男を擁しフェラーリ488 GT3でGT300に挑むLMcorsaはここ2戦こそ不運な展開が続いて入賞を果たせずにいるが、開幕からすべて完走を果たし、しぶといレース展開を見せ続けている。ランキングトップのマシンのウエイトハンデが上限の100kgに近づく中、「JMS LMcorsa 488 GT3」はまだ26kgにしか達していない。実はラップスピードが富士スピードウェイよりハイアベレージのチャーン・インターナショナルサーキットにおいては、ウエイトハンデに苦しんでいないことは絶対的な武器になるはずだ。ここで好結果を残し、ランキングでも一気に躍進を遂げることが期待された。


今回も走行開始は土曜日午前の公式練習から。まずは新田によるチェック走行が行われる。決勝レース想定のセットでロングランをかけて、45分もの間にピットに戻ってきたのは一回のみ。この間に1分35秒217を記し、最後にイン〜アウトを行って都筑にステアリングを託す。

都筑もまた、途中のピットストップは一回だけ。後半に1分35秒497をマークした後に締めのイン〜アウトを行い、再び新田が「JMS LMcorsa 488 GT3」に乗り込むこととなる。そしてここからは予選モードに入って、1分34秒818へ。

ここまでトラブルなく順調にメニューがこなされていたように思われたものの、ひとつ重大な問題も明らかになっていた。持ち込んだタイヤのうちソフトタイヤが路面にまったくマッチせず、予選、決勝での選択は困難であると判断されたのだ。ここまでの大半をやむなくハードタイヤで走行せざるを得ず、予選、決勝に向けて一抹の不安を残すこととなってしまった。



■予選結果 17th(1'34"038)

猛暑を覚悟した予選だったが、その意味では少々拍子抜けの感も。気温はせいぜい30度に達するか達しないかで、その上、予選を前にしてサーキット上空には黒い雲が立ち込める。ついにスコールに襲われるのかと思われたものの、少々雨が舞っただけで路面を濡らすまでには至らず。だが、この雲は路面温度を28度と気温よりも下げてしまう。


今回は久々に新田がQ1を担当。ピットで3分間ほど待機してから走行を開始する。残念ながら路面状態に大幅な変化がなかったことから、公式練習での判断どおりハードタイヤをチョイス。2周をウォームアップに充てた後、いよいよ新田はアタックを始めることとなる。まずは1分34秒038をマークするものの、納得のいくタイムではないのは明らかだ。そこで一度クールダウンを行った後、再度アタックをかけることに。ところがここからの3週はいずれもクリアラップがとれず。いたずらに時間が経過する中タイヤのピークは過ぎてしまい、結局1分33秒台には最後まで乗せられず予選が終了。「JMS LMcorsa 488 GT3」は17番手に留まり、Q2に控える都筑につなぐことはかなわなかった。


■決勝結果 12th(60laps)

日曜日になると日差しは一気に強くなって、ようやくタイらしさを取り戻したかのような気候になった。早朝のフリー走行ですでに気温は32度、路面温度は39度に。前半は新田がドライブし後半は都筑が担当した。ベストタイムは新田が1分35秒444で、都筑が1分36秒509。この後に行われたサーキットサファリにも都筑は走行し、バスが離れた後半には1分35秒263をマークする。


今回のスタートを担当する新田は8分間のウォームアップで2周走行し、最終チェックを行った後「JMS LMcorsa 488 GT3」をグリッドに進めることとなった。時にタイのレースファンは、日本のレースファンより熱心なのではないかと思うことがある。それが証拠にグランドスタンドからは鳴り止まぬ応援が。ドライバーのボルテージも一気に高まっていく。


スタート時の気温は33度、路面温度はついに44度にまで達した。決勝レースはいきなりヒートアップ。随所で激しいバトルが繰り広げられる中、あらかじめタイヤ無交換を視野に入れていた新田はまずはポジションをキープ。しかしレース展開は序盤のうちから徐々にサバイバルレースの様相を呈すようになり、2周目には15番手、3周目には14番手に浮上。7周目にはさらに1台抜き去って13番手につけることとなる。そこから先は均衡状態が続き、また20周を過ぎた頃からドライバー交代を行うチームが出始める中、新田は実に36周まで走行。過酷なコンディションにもタフネスぶりを証明することとなった。そして暫定2番手で都筑と交代し、新田の判断によって当初から想定されたタイヤ無交換で送り出す。


しかし、ピットイン時にミッションが不具合を起こし、そこで抱えてしまったロスによって「JMS LMcorsa 488 GT3」の順位は再び13番手に。それでも都筑は後続からのプレッシャーを受けることなく、タイヤをいたわって走行し安定したラップを刻んでいく。そんな中、2番手を走行していた車両がGT500車両と接触して戦線離脱。52周目に都筑は12番手に浮上する。そして60周目にはチェッカーが振られることに。5ポジションアップには成功したものの、またしてもあと一歩のところで入賞は果たせなかった。


残すはツインリンクもてぎでの2連戦。オートポリスの代替レース、第3戦を土曜日に行い、最終戦を日曜日に行うという変則スケジュールは、うまく流れをつかめば大量得点の可能性もある。この3戦はあと少しのところでポイントを逃す悔しいレースが続いたが「終わり良ければ、すべて良し」となることを期待したい。


■チーム監督 小林 敬一

17番手からのスタートだったんですが、全体的にみんなが淡々と走っていたので、簡単にはジャンプアップできませんでした。抜くにしても一台ずつというレースをしていたんですが、みんなそこそこ同じようなタイムで走っていたので、なかなか簡単には順位を上げられず……。いろいろ戦略を練ったんですけど、ちょっと今回のここはフェラーリにはしんどかったので、クルマ的に言うと。何のアドバンテージのないまま走りきったという感じのレースでした。ただ、次のもてぎになれば気候も涼しくなるし、フェラーリにとってはまたいろんなチャンスがあると思うので期待はしています。


■ドライバー 都築 晶裕

ソフトタイヤが上手く発動せず、予選、決勝とハードで行かざるを得なかったのでタイムが出ないのは分かっていたんですが、思ったより悪かったという印象でしたね。このコースを走るのは2回目で好きなタイプではあるんですが、レースではピット位置が悪く、熱が入った状態でのピットアウトはタイヤカスがすごくて、序盤はそのピックアップに苦しめられた感じでした。その中でもできるだけプッシュしようと思って走り、終盤に35秒台前半を刻めた事を考えると歯車が合えばもっといいレース展開が出来たのは間違いないので、悔しさが残るレースになりました。次戦の茂木は最終戦、同じサーキットで2レースなので、しっかりセットを合わせ表彰台を目指して、最後は笑って終われるようにしたいですね。


■ドライバー 新田 守男

予選も決勝もハード系のタイヤで走らなくてはいけなかった状況にしては、レースベースはトップ3ともそう違わなかったので、レース展開としてはそんなに悪くないのかなと思っていたんですけど……。ピットインした時にちょっと問題が生じて、ニュートラルに入ってしまって1速に入らなくなっちゃったんです。ピットレーンだけで何秒かロスしてしまって、ピットアウトした都筑選手がジャンプアップすることができなくなったのが痛かったですね。何もなければ、きっと8位とかで終われたとは思うんです。次のもてぎも厳しいかな、ストレートが速くないクルマだしもてぎはストップ&ゴーなんで、それがどう影響するか。そんなに暑くないはずですから、熱問題は生じないでしょう。最後はすっきり終わりたいですね。


■エンジニア 成澤 健二

土曜日の練習走行から流れが悪くて、ダスティな路面に柔らかいタイヤを使えなかったのが痛かったですね。それに暑い中、エアコンの調子も良くなかったんですが、それはドライバーが頑張ってくれて。新田さんがけっこう引っ張ってくれましたし、しかも硬い方のタイヤを無交換で行けたので、そのへんは収穫だったと思います。ただ、予選でもう少し前に行かないといけないし、行けるようなクルマを作らなきゃいけないと思いました。今回も決勝のペースは良かったですし、ドライバーの方のドライビングの課題もだいぶ分かったので、次は行けると思います。