SUPER GT Rd.3茂木レポート


AUTOBACS SUPER GTシリーズ第3戦は本来ならオートポリスで行われるはずだったが、熊本地震の影響によって中止となり、代替レースが最終戦と併せて「MOTEGI GT GRAND FINAL]として11月11〜13日にツインリンクもてぎで開催された。シリーズ初の1大会2レース開催のため、土曜日に第3戦の予選、決勝レースを、そして日曜日に最終戦の予選、決勝が行われることとなった。


都筑晶裕と新田守男を擁しフェラーリ488 GT3でGT300に挑むLMcorsaは、開幕からすべてのレースで完走を果たしてきた。残念ながら、ここ3戦はあと一歩のところで入賞を果たせておらず、結果への渇望感が極めて高くなっている。今回は7戦目に相当するレースとあってレギュレーションによりウエイトハンデは半減するが、それでも上位陣は50kg前後積んでいるのに対し「JMS LMcorsa 488 GT3」は13kg。この差がストップ&ゴーが繰り返されるもてぎのテク二カルレイアウトには大いに武器となることが予想された。

今回の走行開始は金曜日の午前からで、公式練習のセッション1は都筑からの走行となった。しかし、未明からの雨は路面を強く叩きつけ、まともに走行できるような状況ではない。その上、天気予報では午後には雨が止むこと、土曜日からは好天に恵まれることを伝えていたこともあり、しばしピットで待機。一度赤旗が出るが、再開後には雨が弱くなったこともあり、ようやく走行を開始する。都筑が2分31秒272を記録したところで2回目の赤旗が出たためそのタイミングで新田とチェンジ。より雨は弱まっていたため最初の計測ラップで新田は2分30秒715をマークするが、その直後に目を覆う光景が!


2コーナーの立ち上がりでコントロールを失い、ガードレールに激しくヒットした「JMS LMcorsa 488 GT3」がモ二ターに映されたのだ。新田がすぐに降りなかったのはレスキューからの指示で、無傷だったのは不幸中の幸い。だが、マシンのダメージは大きく、続いて行われた公式練習のセッション2には走行を許されなかった。


ここまでトラブルなく順調にメニューがこなされていたように思われたものの、ひとつ重大な問題も明らかになっていた。持ち込んだタイヤのうちソフトタイヤが路面にまったくマッチせず、予選、決勝での選択は困難であると判断されたのだ。ここまでの大半をやむなくハードタイヤで走行せざるを得ず、予選、決勝に向けて一抹の不安を残すこととなってしまった。



■予選結果 8th(1'57"349)

公式練習でクラッシュしてしまった「JMS LMcorsa 488 GT3)だが、メカニックの懸命な作業によって修復完了。予選に挑むことが可能になり、まずは一安心といったところだ。さて、その予選だが、今回はQ1、Q2と続くノックアウト方式ではなく、15分の1セッションだけで、ひとりのドライバーのみがアタックを行う。しかし、同じドライバーが連続して予選に挑むことは 認められていない。第3戦の予選には新田が挑むこととなった。


天気予報どおり土曜日のツインリンクもてぎは好天に恵まれることとなったが、早朝の路面は水たまりは無いがまだ濡れたまま。タイヤ選択が気になるところではあったものの、路面が乾いていくことを想定してまずはドライタイヤを装着して新田をコースへと送り出す。1周して新田はピットに戻り、走行に支障がないことは確認できたがドライタイヤが発動するような路面状態ではないことを告げたことから、レインタイヤに交換して再度アタックが行われることとなった。


計測2周目に2分4秒台に入れた新田は、さらにアクセルを踏み込んでいき2分1秒292をマーク。そしてラストアタックで1分59秒266にまで短縮を果たす。予選終了間際になってようやくタイヤも温まり、もう1周あれば更にタイムは削れたはずだったがここでチェッ力一が出て、8番グリッドを獲得することとなった。


■決勝結果 11th(50laps)

予選終了から4時間足らずで決勝レースのスタート進行が開始され、最初に設けられるウォームアップは通常より7分長い15分間での計測となる。もう路面は完全にドライコンディションとなっていて、ようやくドライタイヤが 装着できる状態となっていた。


スタートを担当する新田がまず「JMS LMcorsa 488 GT3」に乗り込みピットアウト〜インを2回行い、レース中のピット作業シミュレーションをしつつ都筑にチェンジ。交代した都筑が1分50秒184、50秒541と好タイムを連発したところでウォームアップは終了。その後マシンの最終チェックが行われて、グリッドへと送り出された。


スタート直後、そしてオープニングラップには混乱もなく開始された決勝レースながら、2周目に差し掛かるといきなりアクシデントが発生。まず第1アンダーブリッジで1台がコースアウト。すぐにセーフティ力ーがコースインするが、それから間もなく第2アンダーブリッジでもクラッシュがあり、大破したマシンとコース上に流れた液体がモ二ター上に映される。


セーフティーカーランは5周に渡って行われ、リスタートにも混乱はなく新田はポジションをキープ。しばらくは均衡状態が続いたが、15周目には2台にかわされ、さらにもう1台にも……。予想以上に路面温度が上がってきたためタイヤのグリップダウンが著しく11番手にまで後退してしまったことから、ミニマムの周回数でピットに戻すことをチームは決断する。


18周目に都筑へと交代するとともに、タイヤをソフトからミディアムに4本とも交換して「JMS LMcorsa 488 GT3」はピットアウト。しばらくは後方に留まるも、トラフィックに悩まされることもなく都筑はコンスタントにラップを刻み続ける。そして全車がドライバー交代を終えた時には13番手につけていた。その後も先行車両のトラブルがあって11番手まで浮上。ポイント獲得まであと一歩と迫り前が見える位置でもあったのだが、ロングスティントとなってしまったためタイヤは終盤には音を上げており、惜しくも11番手のままフィニッシュとなった。


しかし、しっかりと完走を果たしたことで、ドライコンディションでのデータはしっかり獲得できたため、続く最終戦への構えは万全となるはずだ。ウエイトもすべて下ろせることから、今シーズンの集大成のレースとなることが期待される。



■チーム監督 小林 敬一


公式練習でクラッシュはあったものの、ダメージは思っていた以上に少なく、パーツもしっかり持っていて修復できたので、それはすこく良かったです。メカニックのみんなもすこく頑張ってくれました。予選に関してはぶっつけ本番になってしまいましたが、それは他も同じ条件ですしまずまずの順位だったと思っています。決勝も本当ならば入賞したかったんですけど、内容的には想定の範囲でできたので、最終戦につながる要素は確実に得られたと思います。クラッシュやトラブルは得てして流れを悪くしてしまうものですが、むしろいい方向に進んでいます。この流れで最後まで行きたいですね。


■ドライバー 都築 晶裕


カニックの皆さん、チームの皆さんがすこく頑張ってくれて、予選に間に合わせてくれたことにものすこく感謝しています。そのおかげで予選では新田さんが8番手といういい結果を残してくれたんですが、決勝はソフトタイヤの磨耗が予想以上で、ミニマムの周回数でピットインせざるを得ない状態、その後の自分のスティントが長くなってしまったので、ミディアムタイヤでもかなりつらくなってしまいました。ただ、最終戦は通常ピットタイミングを行なえればもうちょっと上 の順位を狙えるんじゃないでしょうか。クルマのバランスもいろいろと反省する部分もあるので、それを修正して次のレースには万全な体制にしたいと思います。


■ドライバー 新田 守男


僕のミスで壊してしまったマシンをメカニックさんたちがしっかり直してくれたので、いきなりの予選でも問題なく走れてヨコハマ勢としては3番目ですから、そんなに悪い感じじゃなかったんです。そういう印象だったから決勝もあんまり心配していなかったんですが、思った以上にタイヤが早い段階でグリップしなくなってしまったので早めにピットに入ってもう1種類のタイヤで都筑選手に行ってもらいましたが、やはり途中から厳しくなってしまったようですね。なんか路面とタイヤのマッチングに苦労している感じがあって、あとちょっとのところでポイントが獲れるところまで行ったんですが、この苦労を最終戦にいい意味で活かしたいと思います。


■エンジニア 成澤 健二


修復作業はそれほど長くかからず、思ったよりもダメージは及んでいませんでした。夜の9時ぐらいですかね、終わったのは。足まわりはまあまあいっていたんですが、スペアパーツがあったのでそれは換えて。何よりフレームが無事でしたし、大事なところや持っていないパーツは生きていたんで、ちょうど良くなんとかなりました。予選、決勝に関しては、どのチームもそうですがドライをまったく走っていなくて、完全にぶっつけ本番状態ではあった中では、まあ良かったかなと思います。最終戦に向けてはブレーキとか課題はいくつかあるので、そのあたりを対策して、もっと上に行ってもらえる状態を作りたいと思います。