2015 AUTOBACS SUPER GT ROUND1
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
5月2日(予選)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ 観客数:33,500人
5月3日(決勝)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ 観客数:58,000人
中山雄一がレコードタイムを更新し、佐々木孝太が記録更新!13回目のPP奪う!
「TOYOTA PRIUS apr GT」が圧倒的な強さで優勝を遂げた開幕戦から約1か月。SUPER GTの第2戦が、ゴールデンウィーク真っ最中の富士スピードウェイで開催された。本来ならば嵯峨宏紀選手はWEC(世界耐久選手権)のベルギーラウンドに出場するため、代わって佐々木孝太選手が中山雄一選手とコンビを組むはずだった。
ところが、ヨーロッパ側のチーム事情によって、嵯峨選手は今回のWEC出場が叶わなくなってしまう。幸い、第2戦は500kmレースで2回のピットストップが義務づけられ、ドライバー3人での出場が可能とあって、急遽であったが嵯峨選手は第3ドライバーとして加わることとなった。最多ポールポジション獲得記録で佐々木選手の速さは誰もが認めるところであり、若さ溢れる中山選手の実力は前回の勝利で実証済。これにプリウスGTのすべてを知り尽くした嵯峨選手が加わった、強力トリオならば40kgのウエイトハンデさえ、きっと跳ね除けてくれるはずだ。
公式練習 5月2日(土)8:50〜10:25
開幕戦の勝利によって、シーズンオフに行われた改善、改良が正しい方向で進められたことを実証した「TOYOTA PRIUS apr GT」。第2戦の富士と過去3年間、相性のいいサーキットであったことから、ウエイトハンデを背負ってなお、連勝も夢ではないと思われていた。土曜日の早朝に行われた公式練習では、実戦初参加となる佐々木選手から走り始めた。いつものように、開始から間もなくはピットイン〜アウトを繰り返した後、1分39秒945を記録。
そこから本格的に周回が重ねられていくはずだった。ところが、ソフトウェアのトラブルによってピットを離れることができず、いたずらに時間が経過していく。メカニックたちが懸命に原因を探るが、判明せず公式練習は終了。その後に行われたサーキットサファリにも、走行は許されなかった。
公式予選 Q1 5月2日(土)14:15〜14:30
公式練習の終了からインターバルは4時間足らずであったが、その間にトラブルは解消。どうやら走行には支障がなさそうだ。あらかじめQ1を中山選手が担当するのは決まっていたが、問題はぶっつけ本番となること。そこでQ2進出をより確実なものとするため、ブリヂストンが持ち込んだ2種類のタイヤのうち、ソフトを選択することとした。
その選択が見事に的中し、44秒台、40秒台、38秒台と1周ごと着実にタイムを刻んで行き、勝負どころとなるラップでは、最終コーナーの立ち上がりからスリップストリームも使えたこともあり、中山選手は1分36秒516を記録してQ1トップに。なんと想定外のコースレコードまで樹立した。
公式予選 Q2 5月2日(土)15:06〜15:18
Q2を担当するのは佐々木選手。中山選手からマシンはほぼ完璧な状態であることを伝えられていたこともあり、タイヤは決勝のスタートにも用いられる可能性を考慮し、中山選手が使用したものより若干ハードなタイヤをチョイス。それでも佐々木選手は「TOYOTA PRIUS apr GT」の持ち味を最大限に引き出した。
中山選手同様、周を重ねるごとにタイムを縮め、45秒台、41秒台、38秒台と来て、ついに1分37秒251でその時点でのトップに。もちろん、これで満足できない佐々木選手は、さらにコースを攻めていって、次の周には1分36秒952をマークする。Q1で中山選手の記したレコードタイムにこそ及ばなかったものの、自身通算13回目のポールポジションを獲得することとなった。
佐々木孝太選手
今回が実質、僕の開幕戦なので、練習でしっかり距離を重ねていきたいと思っていたのですが、トラブルがあってアタック想定の走りができなかったのは、かなり不安ではありました。でも、クルマは最高の仕上がりで、ブリヂストンタイヤもいい仕事をしてくれたので、ポールポジションを獲ることができました。ハード寄りのタイヤだったとはいえ、中山選手のタイムにはビックリして、いい刺激にもなりました。予選はウエイトハンデがそれほど響きませんが、決勝ではさらにガソリンも満タンになると思うので、楽なレースはできないでしょう。でも、ドライバーひとりひとりが自分のパートで、しっかり仕事をこなしていきたいと思います。
中山雄一選手
僕はQ1を担当して、どうしても13番手までに入らなければならなかったので、決勝では厳しいと思われるソフトタイヤを使って、しかも最後にものすごいスリップストリームも使えたおかげで、夢のようなタイムが出せたから、自分としてはいい仕事ができたと思っています。佐々木選手にマシンの状態を伝えて、Q2でも最高の走りをしてもらったことにも満足しています。佐々木選手の加入はすごく刺激になっていて、タイヤの違いを差し引いても、同じぐらいのパフォーマンスがあるんじゃないかな、って自分の中では手応えも感じられましたし。ただ、走り終わってから「レコードだったんだ」って気づいたぐらいなので、記録を打ち立てた実感はまだありません。
嵯峨宏紀選手
ご存知のとおり、いろいろありましてWECのスパには出られなくなり、急遽エントリーすることになったんですが、佐々木選手の最多ポール記録のために「Q2行ってもらおう」なんて話をしていたら、まさに有言実行で本当に獲れるとは、40kg乗っている状態では夢にも思っていなかったので、本当に嬉しいです。トップからスタートできるのはレースを進める上で最も有利なので、気を引き締めて明日は走りたいと思います。500kmは毎回、セーフティカーが入ったり、いろいろ荒れたりしますので、3人ともどんな状況にも対応し、レースでの強さを見せたいと思います。
金曽裕人監督
朝の走行がほぼ出来なかった状態で自分たちのパフォーマンスが分からず、Q2に進む事を前提に中山選手にはソフトタイヤでアタックさせました。スリップを上手く使ったにしても、一周しかおいしいところがないソフトタイヤで出したタイムがコースレコード。全くの想定外で正直びっくりです。但し決勝は厳しいはずなので、佐々木選手には中山選手よりハード方向のタイヤをチョイスし、アタックしてもらいました。2番手のGT-R GT3とはかなり僅差でしたが さすが最多ポールポジションドライバー!きっちりとまとめグリッドの最前列を獲得。決勝の不安要素は、ハードタイヤでポールポジションということは、我々のブリヂストンタイヤのハードは他のタイヤメーカーに対してソフトではないのか?果たしてどこまで持つのか?データーが無いので明日は、確実なレースが出来ればよいと思う。今日は全てが想定外です・・・・。
決勝日・フリー走行 5月3日(日)9:00〜9:30
予選の行われた土曜日同様、日曜日も天候に恵まれ、絶好のレース日和となっていた。爽やかな青空が広がる中、9時からスリー走行がスタート。最初に走ったのは佐々木選手で5周し、ラストの2周は38秒571、38秒065と、好タイム連発してトップに立つ。続けて走行した中山選手はイン〜アウトのみで十分と、走行を終了。そして残り時間は嵯峨選手の走行に充てられた。
このレースウィーク、初めて「TOYOTA PRIUS apr GT」のステアリングを握った嵯峨選手ながら、すでにタイヤには熱が入っていること、さらに3人の中で最もマシンを熟知していることもあって、即座に39秒台を連発し、6周走って自己ベストも38秒859と、状態の良さを確認したところでチェッカーとなった。
決勝レース(110周)14:22〜
スタート進行の開始とともに行われる、8分間のウォームアップ走行には、スタート担当の佐々木選手がイン〜アウトだけのチェック走行を行った。ピットインをし、一息ついてスタンドを見渡すと、超満員! 天気の良さもあって、この日だけで5万8千人もの来場があり、二日間の合計は9万人オーバー。どれだけSUPER GTの人気が高いか、分かろうというものだ。前回とは異なり、降雨の心配は一切なし。少々雲が浮かぶようにはなったが、それまでと大きくコンディションが変化しているわけでもなく、むしろスタンドで見守る大観衆には過ごしやすくなったぐらいだろう。
今回も静岡県警の白バイ、パトカーの先導によるパレードランが行われた後、いよいよ熱戦の火ぶたが切られる。佐々木選手は背後につける2台がターボ車であるGT-R GT3とあって、爆発的な加速を警戒しつつも、絶妙なアクセル全開タイミングで逆転を許さず。「TOYOTA PRIUS apr GT」はトップのままで周回を重ねていく。とはいえ、後ろには3台が等間隔で続いており、一瞬たりとも気の抜けない状態ではあった。
そんな中、8周目に入ったばかりの1コーナーでアクシデントが発生。リヤタイヤのバーストで1台がストップ。その際にオイルが撒かれてしまう。マシンの回収とオイル処理のため、9周目から4周に渡ってセーフティカーがコースに。リスタート後もトップを守り続けていた、佐々木選手ではあったが……。その後リスタートもそつなくこなしたが、40kgのウエイトハンディも効き、周回を重ねるたびにリアタイヤの摩耗が厳しく、思うようにペースを上げられなくなってしまう。27周目に2番手に後退、極端に差が広がるのを防ぐ意味も込めて、34周目に中山選手と交代する。
序盤にトップを争っていた2台の車両が早めのピットストップで、給油時間を最小限としていたこともあり、「TOYOTA PRIUS apr GT」はふたつ順位を落とすこととなるが、コース上のスピードでは優ったことで、中山選手は51周目に3番手に浮上。先行する車両とのピットタイミングの違いもあって、60周目には2番手に返り咲いたばかりか、トップの「B-MAX NDDP GT-R」がタイヤのバーストで遅れたこともあって、65周目からはトップに立つこととなった。
そして、70周目からは嵯峨選手の番。最終スティントを「TOYOTA PRIUS apr GT」は2番手でコースに復帰することとなった。背後には「GAINER TANAX SLS」が迫り、激しいプレッシャーをかけてくるが、嵯峨選手は少しも動じず、しっかりガードを固め続ける。しかし、これが許されたのはスティント前半だけだった。嵯峨選手のスティントでは40kgのウエイトハンディからタイヤの摩耗だけでなく、ブレーキが音を上げ始めたため、やがて防戦一方となり、やむなく92周目に先行を許すことに。それでも遅れることなく続いたものの、背後には「B-MAX NDDP GT-R」が迫って来たではないか。やがて2番手争いは三つ巴の戦いに……。
必死に耐え続けた嵯峨選手ではあったものの、ついに限界が。97周目に1台を、そしてラスト2周となる99周目にももう1台に抜かれて4番手に。「それでも表彰台は」という強い意志のもと、最終ラップとなる100周目の1コーナーで再逆転を狙うも、タイヤとブレーキは最後のひと我慢を残しておらず、スピンを喫することに。それでも後続は大きく引き離していたこともあり、4番手のままフィニッシュ。表彰台にはあと一歩のところで届かなかったものの、「TOYOTA PRIUS apr GT」はランキングのトップを死守することに成功した。
次回のレースは、2度目の開催となるタイ、チャーン・インターナショナルサーキットが舞台。6月であっても、真夏のような暑さとなることが予想されている。となれば、10月の開催だった昨年とは、また違った展開になる可能性も十分にある。「TOYOTA PRIUS apr GT」の大活躍を、大いに期待したい。
佐々木孝太選手
スタートからいいペースで走れたというか、思いのほか後ろが来なかったので多分我々のブリヂストンは彼らよりソフト寄りのハードタイヤだったと思う。そのことも感じたので、タイヤをマネージメントして走っていたんですが、周回を重ねるたびにペースが上げられなくなったところに、GT-Rが来たという感じで……。抜かれても、なんとか付いていければ勝負権あるかな、と思ったんですけど、タイミングの違いで給油時間を短くされたのに対して、僕の時はピットで稼げなくて。一生懸命みんなでプッシュしたんですけど、全体的にライバルのペースが速くて、一枚上手だったかな、という感じでしたね。3位にはなれた可能性はあったと思うんですけど、シリーズを考えれば上出来です。
中山雄一選手
僕のスティントではニュータイヤを履いて行ったので、もっとペースを上げられると思ったのですが、タイヤの摩耗の事を考えマネージメントしました。それでも最後の3周はオーバーステアが厳しく大変でした……。最終スティントの嵯峨選手も、それほどペースが良くなかったので、40kgのウエイトは決勝で効くのだなと思いました。トップを狙い、決勝でのペースを上げたくてもマシンが言うことを効かない。GTのレギュレーションは良くできていると痛感しました。
嵯峨宏紀選手
予選以上に決勝では、非常にウエイトハンデが厳しく影響し、途中からタイヤも厳しくブレーキも利かなくなってきて……。けっこう満身創痍みたいな状況で、とてもバトルできるような状況ではありませんでした。最後の1コーナーでは、『止まらな〜い』っていう状態でスピン。何ともなりませんでしたね(苦笑)。まったくバトルできるような状況ではなかったのですが、タイミングをずらしてみたり、必死に抵抗はしてみたのですが、最後はブロックする余力もありませんでした。ライバルの安定したタイムをみると我々はウエイトハンディを考慮し、もう少しハードタイヤを選ぶ必要があったかもしれません。
金曽裕人監督
結果だけを言うと非常に難しいレースでした。少数派のブリヂストンタイヤを使用する我々に於いてデーター量が少なく、Life、TIMEを見ても間違いなく我々がチョイスしたレンジはライバル勢よりも柔らかかったと言える。その事から一発タイムは速いが、レースラップ、ロングディスタンス、車両重量に対してアドバンテージは無かった。更に、熱くなるこれからの季節に対してデーターが無く手探り状態になることも否めない。その様な中、3人のドライバーはしぶとく確実に走り切ってくれたことに感謝したいと思います。我々は、まだまだ進化の途上、これからのシーズンを確実に戦いシリーズを狙いたいと思う。