2019 AUTOBACS SUPER GT ROUND 2 富士スピードウェイ#31レースレポート

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開催地:富士スピードウェイ静岡県)/4.563km

5月3日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:35,800人

5月4日(決勝)天候:雨のち曇り コースコンディション:ウェット~ドライ観客数:56,000人


またしても天候に翻弄された決勝レース。手堅い走りで2戦連続完走果たす
全8戦で争われるスーパーGT シリーズの第2戦、「FUJI GT 500km RACE」が富士スピードウェイで開催された。今年もapr は引き続き2台体制で挑むが、マシンをTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)にスイッチ。規定の変更と合わせ、駆動方式をミッドシップからFR に改め、さらにレクサスRC F GT3にも使用される5.4ℓのV8エンジン、2UR-G を新たに搭載することとなった。
「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」を託すのは、嵯峨宏紀選手と中山友貴選手。タイヤはブリヂストンを使用する。
岡山国際サーキットが舞台となった開幕戦では、予選こそ27 番手と下位に沈んだものの、悪天候に見舞われた決勝では13 番手にまでジャンプアップ。天候回復の見込みがないことから、赤旗をもって終了とされたが、もしレースが最後まで続いていたならば、さらなるポジションアップとて決して不可能ではなかっただろう。
今回の舞台である富士スピードウェイは、国内随一の長さを誇るストレートで稼ぐというのが、かつてのセオリーだったが、昨今ではセクター1やセクター2の高速コーナー、さらにセクター3のテクニカルセクションも重視される傾向にある。空力特性に優れるマシンの本領発揮なるか注目された。

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公式練習 5月3日(金・祝)8:50~10:25

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恒例のゴールデンウィーク真っ只中の開催とあって、最初の走行は金曜日となった。公式練習開始時の気温は20 度で、路面温度は29度。これが終了直前には、それぞれ24度、37度まで高まり、まるで初夏のようなコンディションとなっていた。さわやかな青空の下、嵯峨選手から「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は走行開始となった。
最初に予選シミュレーションを行い、嵯峨選手は1分38秒486をマーク。そこからは決勝セットの煮詰めが行われた。GT500ともに走行する時間帯は、すべて嵯峨選手が走行。その間、6回ピットに入ったのは、それだけ入念にセットアップが進められていたことの証明だ。まだデビュー2戦目のマシンを、少しずつポテンシャルアップさせようという、スタッフの心意気をそこに感じさせた。
GT300 単独の走行帯から中山選手がドライブ。終了間際に1分41秒308を記録した中山選手は、続いて行われるサーキットサファリで、一度もピットに戻ることなく周回を重ねていた。

 

公式予選Q1 5月3日(金・祝)14:30~14:45

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今回もQ1 担当は嵯峨選手。気温は22度、路面温度は36度と、公式練習の終盤とほぼ同じコンディションとなっていた。それでもブリヂストンタイヤの特性上、徐々に熱を入れていくのが効果的なのは公式練習で確認済。嵯峨選手はアウトラップを含む4周をウォームアップに当ててから、アタックを開始することとなった。
まず1分38秒424をマークした嵯峨選手は、引き続きコースを攻め続けて、次の周には1分38秒349にまでタイムアップ。さらなる短縮が期待されたものの、3周目のアタックは1分38秒513に留まってしまう。その結果、26番手に甘んじることとなったが、Q1突破のボーダーから1秒と遅れず。今回は2回のピットストップが義務づけられる、500kmの長丁場。ミスなくトラブルなく周回を重ねていけば、上位進出も不可能ではないはずだ。

 

嵯峨 宏紀選手

まだマシンは発展途上で、問題であったブレーキシステムもやっと普通になったレベル。予選時もトライ&エラーをまだ重ねている状態ですから、うまく合わせきれていない部分もあって、正直もどかしくもあります。まだ基本構成の部分でテストしている状態なので、そのあたりが決まればもっと良くなるはずなので、今は我慢の時! 決勝で、少しでも順位を上げられるよう頑張ります。

 

中山 友貴選手

公式練習の感触では、クルマにはポテンシャルがあることが分かったのですが、うまく力を発揮できない状態だったので、予選に向けて大幅にセットを変更して、嵯峨選手がアタックしたんですが、ちょっと厳しい結果になってしまいました。この結果を踏まえて、決勝にはセットアップを大きく方向転換して挑むことになるはずなので、すごく期待しています。注目してください。

 

金曽 裕人監督

側から見れば厳しい結果に見えるでしょうが、まだクルマが発展途上にあり正直、苦難がある事は覚悟しています。まだ2レース目だし……という状態です。apr のやり方だから焦らず1段、1段登っていきます。時間はかかるかもしれませんが、ここからの発展に注目ください。決勝は長いレースですから、何が起こるか分かりません。全力を尽くして、どこまで順位を上げられるか、我々としても楽しみです。

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決勝レース(110周) 5月4日(土・祝)14:30~

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決勝当日は午前中まで青空が広がっていたのに、レース開始が刻一刻と近づくにつれ、怪しい雲行きに。20分間のウォームアップが始まろうという頃には、最終コーナーの向こう側に黒い雲が立ち込めたばかりか、雷鳴さえ響いていた。
なんとかドライコンディションが保たれたウォームアップは、初めて「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」のスタートを担当する中山選手からの走行開始に。5周して1分40秒051を記録した後、嵯峨選手に交代する。終了間際には1分39秒112をマークした。
なんとか雨は降らずにいてほしい、そんな大観衆の願いも空しく、マシンがグリッドに並べられて間もなく雨は降りだしてしまう。その頃はまだ小降りだったのだが……。レースウィーク最初のウェット宣言ということもあり、レースはセーフティカースタートでの開始となった。2周の先導の後、グリーンシグナルが点灯して、いよいよバトルがスタート! しかし、不運だったのは先行車両の中に1台、ドライタイヤを履いていた車両がいたため、トップグループからは大きく離されてしまったこと。それでも1周のうちに2台をパス。9周目には中山選手は22 番手に浮上する。

 

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その頃、雨は勢いを増す一方。12周目からセーフティカーが入り、15周目には赤旗が出されて天候の回復を待つことに。約30分後に再開され、セーフティカー2周の先導の後、再びバトルが繰り広げられることになった。中山選手はしばらくポジションキープの展開となったが、ペナルティを受ける車両もあって、そのつど順位も上がっていく。19番手に上がっていた31 周目に「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は勝負を賭けた。いち早く嵯峨選手と交代し、スペックの異なるウェットタイヤに改めたのだ。
いったんは順位を落とした格好ながら、改めたウェットタイヤがジャストフィット。もし、すでにやんでいた雨が再び降り始めたら、一気に順位を上げることも可能だったはず。ところが、予想外に路面の乾きが早く、その後ドライバー交代を行なった車両はドライタイヤに交換。そのままではこらえきれないと判断し、嵯峨選手を40 周目に呼び戻し、ドライタイヤに交換する。
これでほぼ最後尾まで後退したものの、あきらめることなく嵯峨選手は前を行く車両を捕らえ続け、再び19番手にまで順位を戻した76周目に中山選手とバトンタッチ。ポジションをそのままにコースに戻り、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は19位でチェッカーを受けることとなった。
次回のレースは5月25~26日に鈴鹿サーキットで開催される。予定より1回多いピットストップがなければ……という思いも残る一方で、決勝でしっかり順位を上げられるマシンであることは、再び明らかになった。短いインターバルの中、さらにチームはマシンを磨き上げて躍進を誓う。

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嵯峨 宏紀選手 

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決勝のペースは、僕のスティントではそんなに悪くなかったので、少し光が見えてきた印象がありました。雨のタイミングが悪くピットストップが1回増えてしまったことで、入賞を逃してしまいましたが、それがなかったらトップ10 にも行けたかもしれません。WET テストも、ブレーキシステムの問題から、まともにできていなかったので、失ったタイヤ開発時間を埋めるためにもスペック違いのWET タイヤをTRY するのは承知のうえでした。いろいろ前向きにやってくれるチームなので、次の鈴鹿にはもっといい状態で行けるようになるはずです。

 

中山 友貴選手

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今回、こういう荒れた展開の中で、僕はスタートとゴール、2スティントやらせてもらったんですが、ウェットタイヤとドライタイヤを両方経験できたのと、タイヤ無交換もしたんです、実は。タイヤのマイレージをしっかり見るのも開発の一環でこの間、ちゃんと走れていない分のデータをしっかり取れたというのは、今後に向けての大きな収穫だと思います。チームとしてもまとまっていて、方向性を定めて問題を解決しているので、すぐに劇的に良くなるか定かではないですけど、きっといい方向に行くと思っています。チームの士気は高いので、このままの調子でいきたいです。

 

金曽 裕人監督 

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やっと問題があったシステムが成立し始めたので、クルマの動きが普通になってきて、速いクルマと思えるパフォーマンスを感じられたのが、今回いちばんの収穫です。ここからクルマ磨きをどうやるかが僕らの仕事。長いレースでたくさんのデータが取れたので、この先しばらく公式テストはありませんが、このレースで得られたものを取り入れていこうと思っています。ここに至るまで、多くの時間を無くし開発が進まなかったのは非常に残念ですが、今回ようやく普通になり振り出しに戻れ、スタートを切ることができました。通常ならば、この開発ロス時間は年間成績に大きく響くので、ここからの巻き返しが我々の本気の勝負。今後に注目していただけたら何よりです!

 

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