2020SGT Rd,8富士大会 #31 レースレポート

2020 AUTOBACS SUPER GT ROUND 8 富士スピードウェイ

開催地:富士スピードウェイ静岡県)/4.563km
11 月28 日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:未発表
11 月29 日(決勝)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:未発表



タイヤ無交換を試みるも、パフォーマンスが伴わず…。それでも執念の走りで入賞果たす!


コロナ禍で駆け足の連戦だったスーパーGT も、いよいよ最終戦を迎えることとなり、今年4レース目となる富士スピードウェイで「たかのこのホテル FUJI GT300km RACE」が開催された。

FR に改められた、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)で、apr は引き続き2台体制で挑み、「#31TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」をコンビ2 年目となる、嵯峨宏紀選手と中山友貴選手に託す。

タイヤは引き続き信頼のブリヂストンを使用する。

今年になってマシンは回を追うごとに仕上がっており、予選で確実に上位につけるのは、その何よりもの証明であるが、決勝になると「普通に」レースさせてもらえずにいる。

特にここ2戦はセーフティカー(SC)に翻弄されどおし。SC ランの後にピットに入っては勝機を失うのは明らかであっても、JAF-GT の場合、燃料タンク容量の関係で早く入りたくても入れないという事情がある。
せめてSC が入らなければ……。

いずれにせよ、今年最後のレースは全車ノーハンディー

本領発揮の期待が込められた。


公式練習 11 月28 日(土)9:00~10:35

さまざまなことがコロナ禍によって変化を求められた2020 シーズンだったが、寒い時期にスーパーGT が行われるのは、どうにも違和感を覚えてならない。昨年、DTM との最初で最後の交流戦が行われてはいるがGT300 はスプリントレースとして開催され、しかも「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は出場せず。

開幕前のテストも寒い時期に行われるとはいえ、レースとなるといつ以来やら……という印象であり、極めてデータの少ない状態で臨まざるを得なかった。

今回も最初に「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」をドライブしたのは中山選手。序盤は予選重視のセットで1 分37 秒625 をマークし、以降は決勝重視のセッティング、タイヤチョイスが試される。前述のとおり、この時期の富士でのデータが少ないことから、大胆な足回りのセット変更を行ってもおり、なかなか周回を重ねることができずにいた。

1時間18 分ほど経過したところから、嵯峨選手の走行に。短い周回でピットに戻り、そのつど微調整が行われた。GT300 単独の時間帯で、終了間際に嵯峨選手は1 分38 秒716 をマーク。この公式練習での順位は24 番手だった。
公式練習の後には、今回もFCY(フルコースイエロー )のテストが行われ、引き続き嵯峨選手が走行。15 分間に2回FCY は試され、その合間に1 分38 秒395 が記録されており、本戦に向けては、まだまだ伸びしろはありそうだ。

 

公式予選Q1 11 月28 日(土)13:33~13:43

Q1 に「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」はB グループで臨むこととなり、前回同様、中山選手の走行となった。気温は13 度、路面温度は17 度と、公式予選終了時とほとんど変わらず低いまま。

いつも以上に念入りなウォームアップを行い、計測4周目のワンアタックに中山選手はすべてを賭けた。

その結果、記録されたタイムは1 分36 秒999。しかしながら、Q1 突破のボーダーライン上とあって、スタッフ全員が祈るような気持ちでタイミングモニターを見つめるも、チェッカーが振られた直後にタイムアップした車両が何台も……。

コンマ08 秒及ばず11 番手でQ1 を終了。

「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は、21 番手から決勝をスタートすることとなった。

嵯峨 宏紀選手

走り出しから今ひとつパッとしなくて、曲がらない状況を予選までに対策したつもりでしたが、あまり良くなっていなくて。残念な結果でしたが、これといった打開策がないので、今の所我慢のレースになってしまいそうです。
終戦でこういう状況はつらいですけど、これもレースなんで仕方ないですね。

 

中山 友貴選手

公式練習ではアンダーステアが強い状況で、いろいろタイヤを試しながら対策していって、予選前にクルマにも改善できそうなところがあったので、修正していたんですけれども……。
思いっきりアタックしましたが、思っていた以上にまわりが速かったのと、アンダーステアがあんまり消えていな
くて、クルマが曲がらない状況と格闘するような状況でした。

 

金曽 裕人監督

基本的に今回、無交換を狙って、いつもと違ったタイヤチョイスにしています。でも、それにクルマをまだ合わせ切れていないというのが、いちばんの問題。
ですが、明日は大幅にセット変更を施しましたので後方からですけど、今季初トライのタイヤ無交換で、後ろからドンとジャンプアップしようと思っています。

 

決勝レース(66 周) 11 月29 日(日)13:00~

決勝レース直前に行われる20 分間のウォームアップは、前回に引き続きスタート担当となる嵯峨選手からの走行に。「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は徐々にタイムを上げていき、このセッションのベストタイムとなる、1 分38 秒435 を出した後、ピットイン。中山選手は3周の計測のうち1 分39 秒135 を記したところで、チェッカーが振り下ろされることとなった。ここでの順位は13 番手。

土曜日まで朝晩は冷えるも、日中はそれほど寒くなかったのだが、日曜日になって上空に雲が浮かぶようになると、さすがに寒さを覚えるようになり、実際スタート直前の気温は9度、路面温度は17 度。

決勝のスタートをそつなく決めた嵯峨選手は、オープニングラップのうちにひとつ順位を上げ、さらに2周目、3周目にトラブルを抱えた車両があって18 番手に。5周目には1 台をパスして17 番手に浮上する。

今回は序盤のうちにトラブルを抱える車両が相次ぎ、12 周目には12 番手まで上がることとなる。

そしてミニマム周回となる18 周目を過ぎると、早くもピットに入る車両が続出。前回、前々回のように、セーフティカー(SC)が入った後では勝負権が失われることを危惧しての戦術だ。

しかし、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」に限らず、JAF-GT 勢はひたすら我慢。

幸いSC は入らず、予定どおり23 周目に中山選手と交代する。

タイヤ無交換で素早くコースに戻された、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は、数台を出し抜くことに成功。しかしながら全車がドライバー交代を終えると、ポジションは11 番手。入賞まであと1 台となっていた。しかし、その1 台が手強く、上昇の決め手を欠いていた中、46 周目に7 番手を走行していた車両が緊急ピットイン。これで10 番手に中山選手は躍り出る。前も後ろも離れた状況の中で、しっかりと走り続けた結果、10 位でフィニッシュ。

1ポイント獲得したことで、ドライバーズランキングでは18 位、チームランキングでは17 位。

決して納得の成果ではないが、テストもままならぬ状況の中、シーズンを通じ決勝をほぼフルディスタンス走り抜いたことで、多くの収穫を得ることができた。

3シーズン目を迎える「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は、間違いなく今年よりも高い位置からスタートを切れるはずだ。

 

嵯峨 宏紀選手 


なんとか死力を尽くして1ポイント獲りました。とはいえ、現在置かれている状況下では無交換しかなかったので、最初からタイヤを使わないよう温存しました。
かなりレースは荒れたんですけど、そういうところも「譲るところは譲って、行くところは行って」みたいな感じでメリハリをつけていったんですけど10 位が限界でした……。
これが今回の実力値なんでしょうね。
本来、ポイント獲れたことに満足しちゃいけないチームだと思うし、プリウスのパフォーマンスはもっと高いところにあるはずです。現状を真摯に受け止め、来年に向けてさらに発展させていきたいと思います。

 

中山 友貴選手

今の車両規則はタイヤ無交換で行かないと、JAF車両はピットで勝負の権利さえないから、そういう作戦で行ったんですけど、タイヤが保つか保たないか分からない中、なんとかギリギリ保たせることができて……。
かなりしんどいレースでした。本当に1ポイントだけだったけど、獲れて良かった。やりきったと思います。

 

金曽 裕人監督 


初めてのタイヤ無交換作戦が成立しましたが、クルマのパフォーマンスとタイヤのパフォーマンスを合わせ切れなくて、無交換はできたけど、速さに欠ける状況になってしまいました。
クルマがどのタイヤを欲しがって、どうパフォーマンスを出したがっているか、テストも満足にできないシーズンですから、1年かかっても明確なところが見えなかったというのが、本当のところです。
その背景には、TOYOTA を代表するハイブリッドを積んだ日本で唯一のクルマ、このハイブリッド重量分に合わせたシャシーのセッティングをまだまだ探らなきゃいけない、というのがあります。
我々が先駆者としてやっている、レーシングカーとハイブリッドの組み合わせというのが、これからの時代はもっと大切なテーマになってくる。時代を切り開くためにも、我々が必ずやらなくてはいけないことだと思っているので、来年はこの融合ができるように進めていきます。ご期待ください。